「日本一のケアプランセンターになる」というビジョンを掲げ、2020年に大阪府で居宅介護支援事業を立ち上げられた、紬 崇司様(以下、紬様)。これまでに3事業所を展開し、着実に事業を拡大してきました。
6年目に入り、事業拡大のスピードを上げるために選んだのが、M&Aによる他社グループへの参画でした。紬様は譲渡後も引き続き同社の代表取締役を務め、グループ会社の経営基盤を活かしながら、新たな挑戦を続けています。目指すのは変わらず「日本一」。今回は、経営が順調な中でM&Aを決断した背景や、譲渡後に生まれた変化、これからの展望についてお話を伺いました。
まず介護事業を始められたきっかけを教えてください。
事業を始める前は、デイサービスに勤務していました。
当時、特定の事業所への利用者の囲い込み問題、ケアマネジメントの公正中立性に疑問を感じていました。そうした中で、特定の事業所に忖度することなく、利用者の立場に立ってケアプランを作成できる事業所があればいいのになあと考えるようになりました。それならいっそ自分でつくればいいのでは?と思ったことが、開業のきっかけです。私自身もケアマネジャーの資格を取得し、公正中立な立場で支援できる居宅介護支援事業所を立ち上げました。
これまで事業を続けてこられる中で、大切にされてきたことはありますか。
事業を続ける中で大切にしてきたことは、理念とビジョンです。当社では「大切な人の大切な人を大切にしましょう」の頭文字をとって「T・T・T」という理念を掲げてきました。
例えば、スタッフにとって大切な人が家族だとしたら、私もその家族を大切にしたい。自分の大切な人を、周りの人にも大切にしてもらえたらうれしいじゃないですか。だからこそ、まずは私自身がそれを体現することを意識してきました。
きれいごとに聞こえるかもしれませんが、理念は理想を追い求めるものでいいと思うんです。何か問題が起きたときも、理念があれば立ち返ることができますよね。例えば、スタッフ同士でトラブルがあったときに、「相手への思いやりを持てていたかな?」「会社の理念からずれていなかったかな?」と振り返ることができる。もしずれていたら、また軌道修正すればいいんです。
こうして相手を思いやることを大切にしてきたことが、結果としてスタッフの離職の少なさにもつながっているのかなと思います。

ビジョンについては、どのような目標を掲げていたのでしょうか。
創業当初からずっと掲げているのが、「質・量ともに日本一のケアプランセンターになる」というビジョンです。質というのは、利用者様やご家族、地域の関係機関から信頼され、必要とされる事業所になること。量というのは、ケアマネジャーの人数や事業を展開する地域を増やしていくことです。
スタッフにとって、自分たちの会社がどこを目指しているのかが明確であることは、とても大切だと思うんです。だからこそ、このビジョンは開業当初から一貫して伝え続けてきました。
そして、スタッフ一人ひとりにも「日本一になるために日本を代表するケアマネジャーになる」という気持ちを持ってほしいと思っています。
サッカーで例えると、日本代表は試合に出ている選手、ベンチにいる選手、コーチ陣、みんな同じ日の丸を背負って戦っていますよね。当社のケアマネジャーも経験や実力に関係なく、一人ひとりが「日本を代表するケアマネジャー」という誇りを持ち、その看板を背負う気持ちで仕事に向き合ってほしいんです。そのため、主任ケアマネジャーや認定ケアマネジャーなど、より高い専門性を身につけるための資格取得も推奨し、費用は会社で負担しています。
昨日より今日、今日より明日と成長できているか。専門性だけでなく、人間力も高められているか。年齢や経験に関係なく、それぞれが自分にできる精一杯の挑戦をしてほしいと、ずっと伝えています。
経営が順調な中、自社で事業を続けるという選択肢もあったと思いますが、なぜM&Aによる譲渡を決断されたのでしょうか。
事業が成長して規模が大きくなるにつれ、自分一人で経営を続けていくことに限界を感じるようになっていました。これまで私一人で経営の舵取りを担ってきましたから、仮に私が倒れてしまえば、会社全体が立ち行かなくなる可能性もある。事業が大きくなるほど、そのリスクも大きくなっていきました。
また、私自身が経営者であると同時に、現場のプレーヤーでもありました。日々の業務に追われる中で、思うようなスピードで事業を拡大できなくなっていました。
「日本一のケアプランセンターになる」というビジョンを掲げているのに、このままでは大阪から事業を広げることすら難しいんじゃないかと。どうすれば会社の経営基盤を強くできるのか。どうすれば日本一という目標に近づけるのか。
そう考えたときに、自分たちのビジョンに共感してくれる企業と一緒に成長していくことが、最善の選択肢だと思ったんです。
譲渡後も経営に携わることを決めていたのでしょうか。
はい。私にとって今回の譲渡は、経営から退くためのものではありません。自分で「日本一になる」と言い続けてきた以上、それを実現せずに辞めるのは逃げだと思っています。
これまで私個人に依存していた経営体制を見直し、会社の基盤を強くしながら、目指すべき方向に進んでいく。そのために、力を貸してくれる法人と一緒になることを選びました。ですから、譲渡後も会社に残り、引き続き経営に携わっています。日本一になるという目標を実現することが、今も変わらず私のミッションです。
M&Aを進めるにあたり、不安に感じていたことはありましたか。
初めてのM&Aでしたから、もちろん不安はありました。特に気になっていたのは、最後まで無事に譲渡を進められるのかということです。
M&Aに関するトラブルの話を耳にすることもありましたし、実際に譲渡対価が振り込まれるまでは、何が起こるか分からないという気持ちもありました。自分もそうしたトラブルに巻き込まれるのではないかと、少なからず心配していたんです。
だからこそ、譲渡先はもちろん、間に入ってサポートしてくれる会社についても、「誠実に対応してくれるかどうか」を何より大切にしていました。
CBヘルスケアを知ったきっかけを教えてください。
インターネットで、大阪で介護業界のM&Aに強い会社を調べたことがきっかけです。そのときに候補として見つけた2社のうちの1社が、CBヘルスケアでした。
担当アドバイザーの対応はいかがでしたか。
とても誠実に対応していただいたと感じています。
例えば、私が求めていなかった情報についても、担当者の方から「これは開示しておきます」と提案していただいたことがありました。そうした一つひとつの対応から、安心してお任せできると感じましたね。
それから、譲渡先との橋渡しが非常にスムーズでした。
私が伝えたことは正確に先方へ伝わり、先方の意向もきちんとこちらに届けてくれました。双方の認識に食い違いがなく、安心して話を進めることができました。
仲介会社が間に入ることで、かえってコミュニケーションが難しくなる場合もあると思いますが、今回はそうしたことがありませんでした。双方の思いをしっかりと汲み取り、丁寧につないでいただけたことが、スムーズな成約につながったと思っています。
最終的に、譲渡先を選ばれた決め手は何だったのでしょうか。
やはり、一番は誠実さですね。
今回グループに加わることになった法人は、以前から知っていたこともあり、安心感がありました。何より、当社が目指しているビジョンに共感していただき、一緒に実現を目指せることが大きかったですね。
単にグループに加わるだけではなく、同じ目標に向かって一緒に成長していける。そう感じられたことが、最終的な決め手になりました。
譲渡にあたり、スタッフの方にはどのようにお話をされましたか。
これまでのように私一人で経営を続けることのリスクや、今後の事業成長を考えたときのメリット・デメリットを伝えました。そのうえで、「これが会社にとって一番いい選択だと思う。私もこれまでと変わらず、みんなと一緒に頑張っていくよ」と話しました。
私が会社を離れるわけではありませんし、譲渡後も給与体系などに変更はありません。そうしたこともあって、スタッフにはスムーズに理解してもらえたと思います。
現在は、親会社の社長と当社の幹部スタッフが顔を合わせる機会を設けたり、両社の幹部で施設や提携先を訪問する計画を立てたりしています。会食などを通じた交流も行い、少しずつグループとしてのつながりも深まってきています。
譲渡後、事業にはどのような変化がありましたか。
譲渡後も、事業は順調です。新たに4名ほどのスタッフを採用し、実は譲渡前と比べて月商も増加しました。来年入社するスタッフの面接もすでに終えていますし、新たな事業所の開設も予定しています。
日本一というビジョンを実現するためには、もっと仲間を増やして、事業を展開する地域も広げていかなければなりません。だからこそ、これからもスピード感を持って成長していきたいですね。
グループへの参画によって、ご自身の役割の変化はいかがでしょうか。
そうですね。自社の経営に加えて、親会社の事業にも関わるようになり、仕事の幅が広がりました。
そして、これから特に力を入れていきたいのが、グループ内の介護事業との相乗効果を生み出すことです。当社のケアプランセンターとどのように連携し、お互いの強みを活かしていけるのかを考えています。
当社は独立型のケアプランセンターなので、簡単ではない部分もありますが、グループに加わったからこそ生み出せる価値があるはずです。時間はかかるかもしれませんが、一つひとつ形にしていきたいですね。
譲渡後、ご自身の時間の使い方や今後の事業への向き合い方に変化はありましたか。
実は、今は以前より仕事が増えています(笑)。ちょうど業務の引き継ぎを進めているところですし、税理士の変更や事業拡大も重なっているので、正直なところ結構大変です。
ただ、今後はこれまで自分で行っていた給与計算などの経理・労務業務を、グループの体制に移していく予定です。そうなれば、私自身は営業や採用、事業拡大にもっと時間を使えるようになります。今はその準備段階ですね。
実際に譲渡を終えて、現在の率直なお気持ちをお聞かせください。
あのタイミングで譲渡を決断して、本当によかったと思っています。何より、今はとても楽しいですね!
グループの一員になったことで経営基盤が安定し、大きな安心感があります。以前は資金繰りなども自分で考えなければなりませんでしたが、今はそうした負担も軽減されました。その分、事業をどう成長させていくかということに集中できています。
もちろん、任される役割も増えましたから、しっかり結果を出さなければという責任も感じています。でも、不安はまったくありません。むしろ、これからどんなことができるのか、期待と楽しみの方がずっと大きいですね。あとはやるだけ、結果を出すだけだと思っています。

「事業を譲渡する」という選択肢について、譲渡前と今でイメージは変わりましたか。
変わりましたね。実際に経験してみて、M&Aは事業をさらに成長させる選択肢になるものだと実感しています。
譲渡に対して不安を感じる経営者の方は多いと思いますし、私自身もそうでした。でも、信頼できる企業と一緒になることで、自分たちだけでは得られなかったノウハウや資金力を活用できるようになります。それによって、これまで抱えていた経営上の悩みが軽減され、自分が本当にやりたいことに集中できるようになりました。
もちろん、経営に対する考え方は人それぞれですし、事業の利益をすべて自分で得たいという方もいると思います。でも、会社をさらに成長させたいという思いがあるのであれば、M&Aも一つの選択肢として考えてみていいのではないでしょうか。
さいごに、これから事業の譲渡を考える経営者の方に、アドバイスをお願いします。
もし経営について悩んでいることがあれば、まずはCBヘルスケアのような専門家に相談してみるのもいいと思います。ただ、最終的にどうするかを決めるのは、経営者自身です。
私が伝えたいのは、事業がうまくいっているときこそ、会社の将来について考えておいた方がいいということです。
売上が伸びていて、経営が順調なときは、ある意味、何でも選べるんですよね。自分で経営を続けることもできるし、誰かに事業を託して経営から退くこともできる。でも、経営が厳しくなってからでは、そうはいきません。
私自身、経営の責任や将来への不安から、眠れない日もありました。会社を経営している以上、いつ何が起こるか分かりません。だからこそ、会社が元気なうちに、これからどうしていきたいのか、どんな選択肢があるのかを考えておくことが大切だと思います。
M&Aもその選択肢の一つです。将来の選択肢として知っておくことは、決して無駄にはならないと思います。














