
はじめに
現在、日本の多くの地域で外来患者数はすでにピークを迎え、減少に転じ始めています。
また、2040年頃を見据えた医療提供体制の改革が進むなか、クリニック経営はこれまでの「専門性に依存したモデル」から「地域に必要とされる医療」が評価される時代へと、大きく転換しています。
このような環境変化を踏まえ、2026年6月10日(水)・11日(木)の2日間にわたり、医療経営者を対象に、「あのクリニックはもうはじめている! 外来減少・在宅の頭打ちを打破する「患者が途切れない」仕組み構築」と題したオンラインセミナーを開催いたしました。
本セミナーでは、外来患者数の減少や在宅医療の伸び悩みといった課題を乗り越え、持続可能な経営を実現するための「地域を設計する視点」に着目し、具体的な事例を交えながら仕組みづくりの考え方や実践手法についてお伝えしました。
\2040年に向けて、自院のエリアはどう変化する?/
目次
セミナー概要
本セミナーでは、人口構造の変化を踏まえた最新の市場予測をはじめ、今後クリニック経営において重要となる「患者マネジメント」の考え方から、具体的な事業展開の成功事例までを体系的に解説しました。
- 登壇者:株式会社CBヘルスケア 戦略支援事業本部 本部長 鎮目努
- 講演テーマ
1.市場動向:2040年を見据えた業界シナリオ
2.必要な仕組み:患者の上流を押さえる
3.実例紹介:外来減少・在宅の頭打ちを打破する「患者が途切れない」仕組み
医療市場動向|2040年に向けてクリニック経営はどう変わる?
外来減少が示す構造変化とクリニック経営の転換点
講演の冒頭では、2040年を見据えた医療市場の動向について解説しました。
すでに全国的な外来患者数は2025年前後にピークを迎え、2030年以降は減少に転じることが予測されています。一方で、訪問診療をはじめとする在宅医療の需要は今後も拡大を続け、2040年頃にピークを迎える見込みです。
こうした市場環境の変化を踏まえ、クリニック経営においては「外来患者数をいかに維持するか」だけでなく、「どこで新たな患者ニーズを取り込むか」という視点が重要になります。
その結果として在宅医療の重要性が高まることは事実ですが、本質的には“医療の提供領域の変化”というよりも、“患者との関係性の持ち方そのものが変化している”点にあります。
各地域における在宅医療の需要は2035年頃まで急速に拡大すると予測されており、「今の段階で地域の在宅医療シェアを確保することが、10年後の地域シェアを左右する」と考えられます。講師からは、「クリニック経営を考えるうえで、2040年に向けた最大のキーワードは地域との関係性の再設計である」とお伝えしました。
2026年度診療報酬改定は「連携前提の医療提供体制」
続いて2026年度診療報酬改定を踏まえた今後の医療提供体制の方向性についても解説を行いました。
国は、病院完結型から在宅・地域完結型への転換を進めており、機能分化や連携、効率的な医療提供体制の構築を重視する方向性を示しています。
2026年度診療報酬改定では、地域包括ケアシステムや新たな地域医療構想の実現に向けた医療提供体制の再編を後押しする内容となっており、地域連携・医療介護連携の強化が重要なテーマとなっています。
こうした流れの中で、クリニックには「外来診療を提供する機関」から「地域の医療・生活を支える拠点」へと役割転換が求められています。単独で完結する医療提供体制ではなく、多職種・多機関が連携しながら地域全体を支える仕組みづくりが前提となり、地域によっては訪問診療や在宅医療への関与が重要性を増していくと考えられます。
これらの制度の方向性に共通しているのは、それぞれの医療機関が地域の中でどのような役割・機能を担うのかを明確にすることです。
そのため今後のクリニック経営においては、外来中心の運営だけでなく、在宅医療への参画や地域連携の強化が重要なテーマとなるとお伝えしました。

外来減少時代に求められる、“患者接点の再設計”
求められるのは患者の「数」と「生活」を押さえること
外来患者が減少し在宅医療も競争が進む中で重要になるのが、「患者が発生する前の接点」をどう持つかという視点です。
そこでお伝えしたのが、「患者の上流を押さえる」という考え方です。
これまで多くの医療機関は、病気の発症後や要介護状態になった後のニーズに対応する役割を担ってきました。しかし今後は、それ以前の生活領域(住まい、食事、地域とのつながりなど、日常生活の場)との“接点”をいかに築くかが重要になると考えられます。
つまり、「下流」で患者を待つのではなく、「上流」の段階から接点を築き、継続的な関係性を構築していくことが重要であるということです。
- 「上流」=健康な日常生活や住まい、食事、地域とのつながりといった、病気や介護が必要になる前の生活領域
- 「下流」=病気の発症後や要介護状態になった後に生じるニーズ(訪問診療や調剤など)

これらの視点が今後の地域医療やクリニック経営を考えるうえで重要なテーマとなり、その結果、継続的な患者接点の創出や患者シェアの確保につながるという考え方を紹介しました。
「地域包括ケアシステム」の深化と事業の多角化
「患者の上流を押さえる」という視点は、地域包括ケアシステムとも深く関係しています。今後の地域包括ケアシステムは「構築」段階から「深化」段階へと移行し、医療・介護・生活支援が一体となった体制がさらに求められます。
その中でクリニックは、患者の状態を継続的に把握し、医療と介護・生活支援をつなぐ“起点”となり得る存在にあります。
こうした強みを生かし、住まいや生活支援などの領域とも接点を持つことで、地域における医療・介護・生活支援のハブとして機能し、継続的な患者接点の創出や患者シェアの確保につながります。また、経営の安定化だけでなく、地域における持続的な医療提供体制の構築にも寄与するとお伝えしました。
<事例紹介>高齢者住宅を起点とした地域との接点づくり
セミナータイトルにもある「患者が途切れない仕組み構築」の具体的な取り組みとして、「患者の上流を押さえる」という考え方を軸に、高齢者住宅を起点とした地域連携モデルをご紹介しました。
なぜ今、高齢者住宅が求められているのか?
高齢化の進展により、一人暮らし高齢者や老老介護は今後さらに増加すると見込まれており、安心して暮らせる住まいの受け皿整備は引き続き重要な社会課題です。しかし現在の高齢者住宅市場では、事業者側の収益構造と入居者のニーズにギャップがあります。
多くの高齢者住宅では、初期投資の大きさから入居費用が高額になりやすく、一般的な高齢者のニーズである「年金受給額内での生活」と乖離しているという課題があります。
こうしたなか、年金受給額の範囲内で安心して暮らせる住まいの整備に注目が集まっています。
高齢者住宅の市場ニーズに着目した事業モデル
講演で紹介した事例では、建築コストの最適化や効率的な運営体制により、一般的な高齢者施設では月額平均約17万円程度かかるところ、食事代込みで月額約10万円という利用しやすい価格設定を実現しています。その結果、高い稼働率を維持しつつ、早期の投資回収を可能にしています。
「住宅」を起点にすることで、外来診療から在宅医療、さらには看取りまで切れ目のない医療提供体制を構築し、地域のなかで継続的に患者を支える循環を生み出せるという点も特徴として挙げられました。

仕組みを形にした経営者の声
本セミナーで紹介した「医住連携」モデルを実際に検討・導入された法人様のインタビューを公開しています。
導入の背景や検討プロセス、事業にかける想いをお話しいただきました。現在は地域ニーズを捉えた安定経営を実現されている法人様の生の声を、ぜひご覧ください。
インタビューはこちら
「地域の患者様により満足のいく医療や介護サービスを提供したい」高齢者向け住宅オープンによる新たな挑戦
さいごに
今回のセミナーでは、今後のクリニック経営において、単に病気を治療するだけでなく、「地域に必要とされる医療」を提供し続けることの重要性についてお伝えしました。
患者の生活拠点から継続的な関係を構築していくことが、これからの時代に求められる経営戦略の一つとなります。専門性だけに依存するのではなく、住まいや生活支援も含めた地域全体のケアを設計する視点を持つことが、変化する医療・介護業界のなかで持続的な成長を実現する鍵となるでしょう。
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