
地域包括ケアシステムの構築を展開していくにあたり、介護業界の現場で起きている身近な問題についても理解をしておく必要があります。
今回は介護スタッフとして現場業務に従事し、管理者として有料老人ホームの運営に携わってきた経験を踏まえて、介護事業の組織作りの一つとしてOJTの進め方についてご紹介します。
介護業界の人材不足を解消するため、OJTが果たす役割
どの業界でもそうですが、特に介護業界では永遠の課題として「人材不足(離職防止)」と「提供するサービスの質」があげられます。長年現場業務に携わり、そこで培った知識や経験から導き出した結果、人材不足とサービスの質向上には『OJT(On the Job Training)』が重要な役割を果たすことが分かりました。一方、OJTを行う(指導する)側からは疎遠されがちで、
- 何を教えて良いか分からない
- 自分のペースでできない
- 人に教えるなんて無理
- レポートの確認とかで仕事が増えるだけ
などと言った声があがるのも事実としてあるため、OJTを行う際のポイントについて以下でお伝えします。
相手へ伝えるためには理由と根拠を明確に
OJTを行う際によく間違えてしまうのが「ただ業務の流れを教えるだけ」ということ。行動にはすべてにおいて「
理由と根拠」が存在します。「理由と根拠」の説明を怠ってしまうと本当の意味での理解には繋がりません。例えば「水分になぜとろみをつけるの?」と聞かれた時にどのように答えますか。【回答】 ①加齢による筋力低下で咀嚼力や嚥下力の後退による誤嚥のリスク、またそれに伴う窒息死や誤嚥性肺炎のリスクが高まるから ②噛んだり飲みこんだりする力が弱くなってるため、むせこんでしまうと苦しいから介護職という専門職としての回答を求めるのならば①かもしれません。しかし、これを一字一句間違いなくきちんと伝えるということは、指導側の負担になってしまいます。相手への伝わりやすさを考えれば②でも十分にその意図は伝わるのではないでしょうか。大切なのは小難しい言葉を並べるよりも、理由と根拠の説明が含まれた事柄を、相手にも伝わる分かりやすい言葉で伝えることではないでしょうか。
自分の考えや想いを言葉にして伝える
「自分が考えていることや想っていることを言葉にして相手に分かるように伝える」ことは、簡単なようでとても難しいことでもあります。仕事の内容をきちんと伝えなければならないというプレッシャーものしかかるかと思いますが、実践を繰り返していくことで文章構成能力が身につくため言葉に詰まらなくなったり、コミュニケーション能力が高まったりと個人の能力アップに繋がります。「OJTで指導する側にメリットが何もない」という言葉を耳にすることがありますが、「今までの自分自身の経験してきたことの復習の場」と捉えることができれば、指導する側にもメリットが十分にあると言えます。
コミュニケーションが人材不足解消の一端を担う
OJTとは自分の考えや想い、行動を言葉にして相手に伝えることで、自分自身がやってきたことに対しての振り返りになるという自己研鑽にも繋がります。OJTは「教え慣れをしていないと難しい」と言われますが、OJTの本質を考えれば指導する側が教わる立場の時にしっかりとした指導を受けてきているか、教わる側の気持ちをくみ取った教われ慣れをしているかどうかが重要なポイントとなります。介護事業の組織作りを強化するためにも、教わる側の気持ちを比較的にくみ取りやすい2~3年目の職員が積極的にOJTにかかわることで、必然的に「提供するサービスの質の見直しと向上」へと導き、さらに職員同士のコミュニケーションのきっかけ作りに繋げることで「人材不足解消(離職防止)の一端を担う」という結論にいたります。