
2024年度の報酬改定を控え、医療機関や介護・福祉事業所のみなさまは今後どのように事業推進をしていくべきか、また、地域の中でどのような役割を担っていくべきか、悩まれたり、不安に感じたりしているのではないでしょうか。
来年度の改定は診療報酬、介護報酬さらには障害福祉サービス等報酬が同時に改定される「トリプル改定」が行われます。
すでに報酬改定に向けて、中医協や社会保障審議会で議論がスタートしています。
本コラムでは議論された内容をピックアップし、今後の方向性について解説します。
令和6年度の同時報酬改定の方向性と課題
令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会が、本年3月からスタートしています。そこで、掲げられている方向性は下記です。
(1)「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築(2)サービス提供人材の確保と働き方改革(3)限りある資源の効率的かつ効果的な活用(4)デジタル化・データヘルスの推進(5)地域共生社会の実現その方向性の背景にあるのは、2025年以降の
「高齢者の急増」と「現役世代の急減」です。2025年時点では、高齢者:約5,857万人現役世代:約7,170万人2040年には高齢者:約6,160万人(+6.6%)現役世代:約5,978万人(▲16.6%)となり、高齢者数が現役世代の人口を上回ってしまう推計となっています。(総務省「国勢調査」「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」より)この状況から、下記2点が大きな課題と考えられます。
①経済規模の縮小が起こり、必要な社会保障費の財源確保が厳しい②社会保障を提供するサービスの担い手が不足そのうえで社会保障制度を維持していくために、上記課題を解決すべく、更なる改革を推進していかなければならない状況であるということです。そのためには、社会保障制度全体として、3M(ムリ・ムダ・ムラ)をなくしていくことであり、その実現が各医療機関や事業所に求められていくことになります。
「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築
掲げられている方向性について各項目を見ていきます。
(1)「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築人口構成の変化や医療・介護需要の動向は地域ごとに異なることから、各地域の需要性に応じた提供体制を把握したうえで、地域医療構想と地域包括ケアシステムを推進しムリ・ムダ・ムラをなくすことを実現しようというものです。ここで触れられている項目で気になったのは、「地域医療構想の推進」と「外来機能報告制度」というワードです。現状、地域医療構想の推進については財政制度審議会にて、病床数が2025年に向けて実現したい数字から離れていると言われています。具体的には、2021年時点で急性期が約13.5万床多く、回復期が約17万床少ない状況になっています。この状況に対する施策が出てくるのではないでしょうか。また、外来機能報告制度については、来年の報酬改定で大きな影響があるとはまだ考えにくいですが、医療機能分化を進めたうえで、今まで自由に届け出が可能であった診療所についても将来的には調整していこうという前段階にあたるのではないでしょうか。地域の実情に応じて、サービスの量を調整しようということです。
(2)サービス提供人材の確保と働き方改革(3)限りある資源の効率的かつ効果的な活用これは、主に「現役世代の急減」に対して社会保障制度を維持してサービスを提供していくには業務を今より効率化し、かつ人材を確保するために、職場環境を整えていかなければならないということでしょう。医療従事者については、「タスク・シフト/シェア」という言葉が出ています。つまり、医療行為を看護師や他職種でもできるようにしていこうとしていることや薬局においては、調剤薬局事務がピッキングできるようになりましたが、できることを更に増やしていこうといった流れになるのではないでしょうか。つまり、専門職にしかできないことを整理し負担を減らし、環境を整えていきましょうということです。
デジタル化・データヘルスの推進
(4)デジタル化・データヘルスの推進ここでは昨今話題にもなっている医療・介護分野でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていきましょうという言葉が出てきています。これは、更に社会保障制度におけるムリ・ムダ・ムラをなくしていくため医療・介護情報の一元管理、データ解析していこうということです。つまりデータの共有、報告制度が進んでいくことになるでしょう。また患者さん・利用者さん自身の医療・介護情報の標準化を進めるともあります。地域での医療介護連携を進めていかなければならない中で、主治医とケアマネの連携強化にも触れられています。FAX文化から中々抜け出せない業界であること、また各機関や事業所によって使用する業務システムも違うため、業界全体として、業務上データを処理することに時間がかかっている現状があります。これは先の話になると思いますが、標準規格を作成し、各業務システムの連携を進めていかなければならない時代がやってくるでしょう。
地域共生社会の実現
(5)地域共生社会の実現地域包括ケアシステムに係る取組で多世代型という言葉が出てきますが意味を成すものは2つあります。1つ目は、地域包括ケアシステムの実現には医療・介護・福祉の従事者だけでは間に合わず、地域住民に参画してもらい、共生社会を作っていかなればならないということです。障害を持たれている方も、地域包括ケアシステムで対応していくことに触れられています。2つ目は、「全世代型」の社会保障制度の構築です。収入能力に応じた負担と子育て費用も踏まえ、全世代で社会保障を維持していかなければならないということです。つまり、所得のある方と社会保障を負担する世代を増やして社会保障費財源の獲得をしていくということ具体的には、後期高齢者の医療費負担割合増なども検討事項に含まれているということです。
医療機関や各介護福祉事業所が検討すべきこと
上記を踏まえてここからは、医療機関や介護福祉事業所が検討すべきことを2点挙げさせて頂きます。
①地域ドミナントでの多角化・連携戦略「地域完結型」では、地域の中でいかに効率的に患者さん、利用者さんを獲得できるかがカギになります。つまり、自分たちはどの地域(地域包括ケアシステム内)でドミナント(優位性もつ)を形成するかです。あちこちで事業展開すると顧客データの質も希薄になり、効率が悪くなります。また、事業効率を求めていくには、企業形態の大規模化が必要です。そのためには、エリアを限定して地域包括ケアシステムにおける事業を多角化展開していくことが一つの解決手段になります。②
業務効率化と提供サービスの質、環境確保ITを活用した業務効率化は避けて通れない課題です。「①地域ドミナントでの多角化・連携戦略」により、複数事業展開をする場合、法人内での効率的な共有システムの構築やIT活用による業務負担軽減が必要になります。また、一定の地域内に集中的に顧客を集めることで職員の移動を短縮し、サービス提供数を増やすなどの効率化も図れます。コラムいかがでしたでしょうか。ぜひ今後の経営、事業戦略のヒントにしていただければ幸いです。