
本コラムでは2024年の介護保険法改正によって生まれた新たな制度「介護サービス事業者経営情報の報告制度」について、報告すべき事項や新たに導入されるデータベース「介護事業財務情報データベースシステム」について解説していきます。介護事業者が対応すべきポイントや報告方法についても詳しくまとめています。
※2025年8月末時点での情報となります。
●このコラムのポイント
- 介護事業者は、法改正により経営・財務情報の報告が義務化され、適切な対応が不可欠となる
- 報告制度は介護業界全体の透明性を高め、国の制度設計や報酬改定の基礎資料となる
- 事業者は、GビズIDの取得や会計区分の整理など、早期に報告体制を整えておく必要がある
介護事業者の財務諸表はいつから報告するのか
「介護事業者の経営情報報告」は2024年の介護保険法改正によって新たに生まれた制度で、原則すべての介護事業者は、都道府県へ財務状況を報告することが、2025年1月から義務付けられます。報告されたデータは厚生労働省によって分析され、国民に分かりやすい形で公表されます。なお、公表されるのは事業者単位の個別データではなく、施設種類別や地域別などの集計データであり、個々の法人名や事業所名が公開されるわけではありません。
介護事業者の経営情報報告の目的
この制度の目的は、介護事業者の経営状況を見える化し、実態を把握・分析することです。これにより、介護報酬改定や介護職の処遇改善など、介護制度の持続可能性向上につながる施策検討が進むことが期待されています。2024年の介護保険法改正を背景に、財務情報の可視化によって介護業界全体の透明性と健全性を高めることが狙いです。
報告すべき経営情報とは
報告する経営情報の概要
公表の対象は原則すべての介護事業者です。ただし、過去1年間の介護報酬が計100万円以下の事業所・施設、災害等で報告が困難な場合などは対象外です。報告は基本的に事業所・施設単位ですが、会計区分が困難な場合は法人単位での報告も認められます。
●報告の対象となる事業所・施設
訪問介護
- 訪問入浴介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 通所介護、通所リハビリテーション
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護(則第 14 条第4号に掲げる診療所に係るものを除く)
- 特定施設入居者生活介護(養護老人ホームに係るものを除く)
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 夜間対応型訪問介護
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 認知症対応型共同生活介護
- 地域密着型特定施設入居者生活介護(養護老人ホームに係るものを除く)
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
- 複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)
- 居宅介護支援
- 介護福祉施設サービス
- 介護保健施設サービス
- 介護医療院サービス
- 介護予防訪問入浴介護
- 介護予防訪問看護
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 介護予防通所リハビリテーション
- 介護予防短期入所生活介護
- 介護予防短期入所療養介護(則第 22 条の 14 第4号に掲げる診療所に係るものを除く)
- 介護予防特定施設入居者生活介護(養護老人ホームに係るものを除く)
- 介護予防福祉用具貸与
- 特定介護予防福祉用具販売
- 介護予防認知症対応型通所介護
- 介護予防小規模多機能型居宅介護
- 介護予防認知症対応型共同生活介護
●報告対象の経営情報の種類と内容
今回の制度では介護事業に関する事項を報告する事となっていますが、医療や障がい福祉サービス関連の事業も行っている場合は、それらの収益や費用の記載が介護サービスと区分されていなければ、医療や障がい福祉サービスの事業分を除外せずに報告できます。
介護事業者が報告する内容は、大きく分けて4項目あります。
- 1.事業所・施設の名称、所在地とその他の基本情報
(1)事業所又は施設の名称
(2)法人等の名称
(3)法人番号
(4)介護事業所番号
(5)介護事業所で提供しているサービスの種類
(6)法人等の会計年度末
(7)法人等の採用している会計基準
(8)消費税の経理方式
- 2.事業所・施設の収益及び費用の内容 (※=任意の項目)
(1)介護事業収益
①うち施設介護料収益 ※
②うち居宅介護料収益 ※
③うち居宅介護支援介護料収益 ※
④うち保険外収益 ※
(2)介護事業費用
①うち給与費
ア)うち給与
イ)うち役員報酬 ※
ウ)うち退職給与引当金繰入 ※
エ)うち法定福利費 ※
②うち業務委託費
ア)うち給食委託費 ※
③うち減価償却費
④うち水道光熱費
⑤うちその他費用
ア)うち材料費 ※
ⅰ)うち給食材料費 ※
イ)うち研修費※
ウ)うち本部費 ※
エ)うち車両費 ※
オ)うち控除対象外消費税等負担額 ※
(3)事業外収益 ※
①うち受取利息配当金 ※
②うち運営費補助金収益 ※
③うち施設整備補助金収益 ※
④うち寄付金※
(4)事業外費用 ※
①うち借入金利息 ※
(5)特別収益 ※
(6)特別費用 ※
(7)法人税、住民税及び事業税負担額 ※
- 3.事業所・施設の職員の職種別人員数その他の人員に関する事項 (※=任意の項目)
(1)次の職種ごとのその人数(常勤・非常勤別)
① 管理者
② 医師
③ 歯科医師
④ 薬剤師
⑤ 看護師
⑥ 准看護師
⑦ 介護職員(介護福祉士)
⑧ 理学療法士
⑨ 作業療法士
⑩ 言語聴覚士
⑪ 柔道整復師・あん摩マッサージ師
⑫ 生活相談員・支援相談員
⑬ 福祉用具専門相談員
⑭ 栄養士・管理栄養士
⑮ 調理員
⑯ 事務職員
⑰ その他の職員
⑱ 上記のうち介護支援専門員・計画作成担当者
⑲ 上記のうち訪問介護のサービス提供責任者
(2)(1)に掲げる職種ごとの給与及び賞与※
- 4.その他必要な事項 (※=任意の項目)
(1)複数の介護サービス事業の有無
(2)介護サービス事業以外の事業(医療・障害福祉サービス)の有無
(3)医療における事業収益 ※
(4)医療における延べ在院者数 ※
(5)医療における外来患者数 ※
(6)障害福祉サービスにおける事業収益 ※
(7)障害福祉サービスにおける延べ利用者数 ※
出典:厚生労働省|介護保険法第115条の44の2の規定に基づく介護サービス事業者経営情報の調査及び分析等に関する制度に係る実施上の留意事項について
介護事業者の経営情報の報告方法
介護事業者は都道府県へ財務状況を報告する際に、「介護事業財務情報データベースシステム」を使って報告をすることになります。
このデータベースにログインするには「GビズIDアカウント」といわれるものが必要となります。アカウントの作成方法や運用方法についてはマニュアルが作成され、厚生労働省のHPから確認することができます。
>>>厚生労働省|介護サービス事業者経営情報データベースシステム
報告は「介護事業財務情報データベースシステム」を使い、以下の4つのデータの入力・ファイルの登録が必要となります。介護ソフトから出力したcsvファイルをアップロードしたり、Webの専用フォームに入力したりする形で想定されています。
| 報告データ | 報告データの説明 | 入力形式 | |
| 1 | 損益計算書等データ | 介護サービス事業者の収益及び費用の情報を報告 | ・画面入力 ・ファイル登録 |
| 2 | 届出対象事業所データ | 「損益計算書等データ」に含まれる届出対象とした事業所情報(介護事業所番号、介護事業所名、サービス種類コード)を登録 | ・画面入力 ・ファイル登録 |
| 3 | 事業所連絡先データ | 「届出対象事業所データ」に含まれる介護事業所の連絡先(メールアドレス)を登録 | 画面入力 |
| 4 | 追加情報データ | 報告に関連する情報として、以下の情報を追加情報として登録 ●損益計算書等データに含まれる介護以外の事業(医療、障がい等)に係る情報※報告の対象とするサービスは介護サービス事業に係る事項のみを対象とすることを基本としているが、医療・障がい福祉サービスに係る事業を併せて実施する事業所・施設にあっては、本追加情報として登録する ●事業所または施設の職員の職種別人数その他の人員に関する事項 | 画面入力 |
出典:厚生労働省|会計ソフトウェアベンダ向け説明
経営情報の報告の流れ
- GビズIDを使用し、介護事業財務情報データベースシステムへログイン
- メニュー画面から経営情報データ登録を選択
- 損益計算書などのデータを登録
- 届け出対象事業所データ登録
- 事業所連絡先登録
- 追加情報登録
- 登録内容確認
- 届け出完了
>>>介護事業財務情報データベースシステムの操作方法は厚生労働省の資料からご覧いただけます。
報告スケジュール
介護サービス事業者は、毎会計年度終了後3か月以内に経営情報の届出を行う必要があります。
制度としての届出義務は2025年1月から始まっていますが、現在は「介護事業財務情報データベースシステム」の改修に伴い、令和7年(2025年)3月以降に終了する会計年度分の届出受付が一時停止中です。厚生労働省の発表によると、この受付停止はシステム改修が完了するまでの一時的な措置であり、再開時期は未定ですが、数か月程度での復旧見込みとされています。
なお、制度上は届出期限が定められていますが、今回の受付停止により期限内に届出ができなかった場合でも問題はありません。受付再開後に改めて届出を行うことで、適切に対応したものとみなされます。
介護事業者が対応すべきこと
GビズIDアカウントの登録
「介護事業財務情報データベースシステム」にログインする際に、GビズIDのアカウントが必要になります。
GビズIDアカウントとは法人・個人事業主向けの共通認証システムのことで、1つのID・パスワードで、
複数の行政サービスにログインでき、補助金の申請や社会保険の手続きなどをすることができます。
厚生労働省は本制度についてのQ&Aで、すでにGビズIDプライムアカウントを取得している介護事業者については、「経営情報の報告のために新たにアカウントを取得する必要はない」としています。
会計管理の強化
もし事業所内で会計業務をしている場合は、新制度によって業務負担の増加は避けられません。
都道府県へ提出する財務諸表データは、税務署に提出している決算書ではなく、会計の区分に従い、新しくデータを作成する必要があります。そのため新たな会計専任者を雇用したり、介護事業に精通する会計事務所に変更したりすることも視野に入れるべきでしょう。
さいごに
今回の新制度で公表される情報によって、同業他社の経営指標との比較が可能になるため、自社の経営課題の分析に活用できるようになると思われます。
また、自施設の財務情報を把握しておくことで、将来、不採算の施設を売却、または買収を検討するときに重要な指標となるでしょう。
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