
いきなりですが、今使っている歯ブラシを思い出してください。この部分って、皆さんが子供のころ、もっと長くなかったでしょうか?最近の歯ブラシは、ほとんどがブラシ部分は短いものばかりです。実は、このブラシが短くなるこのタイミングで、歯ブラシ市場のシェアが変わりました。そこで本コラムでは、他業界の事例をもとに経営の考え方について解説いたします。
シェアを誇っていた市場に新規参入企業が登場
長い歯ブラシのシェアが多かった頃、歯ブラシや歯磨き粉、オーラルケアを総合的に展開する「A」という会社がありました。「A」は、世界中で大きなシェアを持っていました。あるとき、「B」という新規参入企業が現れました。
「B」は消費者がより磨きやすい歯ブラシを求めていることに気づき、ブラシの短い歯ブラシを開発しました。「B」の提供する歯ブラシは、瞬く間に市場で受け入れられ、急速にシェアを拡大してきました。シェアが奪われた後の対応
自分たちのシェアが急速に奪われている状況で、この間「A」は何をしていたでしょうか?客観的にみれば、「A」は「B」の商品を参考に、短いブラシの歯ブラシの提供を始め、シェアを奪い返すべきです。では「A」はそうしたのでしょうか?答えは「No(ノー)」です。
「A」は、ブラシの長い歯ブラシのみの提供を続け、結果的に大きくシェアを奪われてしまいました。では、なぜ「A」は短いブラシの歯ブラシを売らなかったのでしょうか?
それは「歯磨き粉も売っていたから」です。歯磨き粉は、ブラシをカバーするようにつけます。つまり、ブラシが短くなると歯磨き粉のニーズが下がります。「A」は歯磨き粉の売上が下がる懸念から、短いブラシの歯ブラシに参入できませんでした。そうこうしている間にシェアトップから落ちてしまい、売上は大きく下がってしまいました。市場での成功体験が逆に足かせとなり、事業展開を失敗した事例です。
歯ブラシ市場に限ったことなのか?
これは歯ブラシ市場に限ったことでしょうか。他の市場、薬局市場でも同じことが起こります。成功体験というのは強烈なインパクトがあり、次の事業展開の基点にもなりますが、逆に動きを制限し、市場の変化に乗り遅れてしまうことがあります。変化が激しい市場では顕著に起こります。
まさに、薬局市場を含め、社会保障制度改革が進む医療介護業界は当てはまるのではないでしょうか。皆様は上の例のように、歯磨き粉の売上に固執し変化を起こせないまま、ということはないでしょうか?もし、そういった可能性があれば一度、問い直してください。
「顧客は何を求めているのか」顧客の声からスタートすれば市場の変化から残されることはありません。こんな認識が頭にちょっとでもあると事業リスクが少し下がるはずです。少しでも皆様の事業展開の参考になれば幸いです。